肝機能の異常、飲酒が多い
「健康診断で肝臓の異常を指摘された」、「飲酒が多いので心配」、「お酒は飲まないのに肝臓の数値が高い」など肝機能について心配されている方は多いと思います。
目次
肝臓とは?
肝臓はお腹の右上に位置する臓器で、重さ1-1.5kg程あり人間の臓器の中で一番大きい臓器です。肝臓は予備能が高く、8割ほど切除しても肝機能に問題はないと言われています。
肝臓の働きは大きく3つに分かれていますがいずれも生命を維持していく上で重要です。
- 解毒:体外から入ってくる有毒な物質(薬剤など)を解毒します。
- 胆汁合成:消化の助けになる胆汁を作り、分泌します。
- 栄養の貯蔵:食事として吸収された糖はグリコーゲンとして貯蔵され、血糖値が下がるとグリコーゲンを分解し糖に変えてエネルギーとします。
肝機能の検査はどのようなもの?
血液検査、エコー、CTなどが一般的です。肝疾患が進行するとMRIや胃カメラなどが必要となる場合もあります。
血液検査
AST
肝細胞に存在する酵素で肝細胞が壊されると上昇します。肝臓以外にも筋肉などにも存在するので心筋梗塞などでも上昇します。
ALT
肝細胞に存在する酵素で肝細胞が壊されると上昇します。
ΓGTP
解毒に関する項目で肝疾患や胆道系疾患(胆管疾患、膵疾患も含む)で上昇します。またアルコール多飲の場合には上昇します。
ALP
肝臓や骨、腸管、腎臓などで作られる酵素で、代謝されて胆汁中に流れます。胆道系の異常があると上昇します。
ビリルビン(Bil)
赤血球が壊れて関節ビリルビンが作られます。肝臓で代謝され直接ビリルビンになり血液中に移行します。肝機能に問題があったり胆汁の流れに異常があると上昇します。直接ビリルビンと関節ビリルビンの割合なども重要になってきます。
腫瘍マーカー(AFP,PIKA-Ⅱ)
肝がんの勢いを反映します。上昇していなければ癌がないというわけではありませんので注意が必要です。
血小板
繊維化の程度を見る
PT
たんぱく質合成能の評価
アルブミン
たんぱく合成能の評価
P-Ⅲ-P(ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、M2BPGiなど)
繊維化の程度の評価
自己抗体(抗核抗体、抗ミトコンドリアM2抗体)
腹部エコー
お腹にゼリーを塗り、エコー装置を用いて肝臓や他の腹部臓器を観察します。
肝臓自体の炎症の程度や脂肪肝の程度、胆石、膵臓の観察なども同時に行います。実際にエコーで診断をつけることはなかなかありませんが、リアルタイムでの観察が可能であること、被曝がないことなど利点が多いです。
MRI
全ての方に必要なわけではありませんが癌の除外をしておいた方が良い場合や、周辺臓器の胆嚢、膵臓、胆管などとの関連を調べるのに有用です。必要時、適切な医療機関をご紹介させて頂きます。
胃カメラ
肝機能が悪くなり肝硬変となった場合には食道/胃静脈瘤という病気を併発することがあります。大出血を起こし命に関わる病気ですので慢性肝障害がある方は一度は受けられた方が良いでしょう。
必要時、適切な医療機関をご紹介させて頂きます。
肝機能異常の原因は?
ウィルス性
肝炎を引き起こすウィルスはA型、B型、C型、E型肝炎ウィルスがあります。ウィルスにより様々ですが食事や血液の曝露、出産などで感染します。
以前は慢性C型肝炎の方が多かったのですがインターフェロンや最近ではインターフェロンフリーのDAAsなどの薬剤の進化により治る病気となり最近では急激に患者さんが減っています。B型肝炎は欧米型のgenotype Aが増加しており慢性化が問題となっています。
アルコール性
厚生労働省によるとアルコールの適量は純アルコールにして20g程度とされています。ビール500ml缶1本、日本酒1合程度です(人によって差はありますし女性ではもう少し少なくなります。)
これを超えて飲み続けると肝障害を起こしアルコール性脂肪肝、アルコール性脂肪肝炎、アルコール性肝硬変へと進展します。脂肪肝の場合は禁酒により元の肝臓に戻りますが肝硬変になると元の肝臓には戻りません。
自己免疫性(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎)
本来、体の外から体内に侵入してくる細菌やウィルスなどを排除してしまおうという働きを「免疫」と言います。
何らかの原因で自分の臓器を異物と認識してしまい、免疫反応をおこしてしまう病気があります。肝臓に障害を起こす自己免疫性肝炎、胆管に障害を起こす原発生胆汁性胆管炎があります。
どちらの疾患も中年以後の女性に多いという特徴になります。
他の肝障害に比べて頻度は低いですが肝障害が持続する方は一度検査をしてみた方が良いでしょう。
脂肪肝(単純性脂肪肝、NASH)
健康診断を受けられた方で男性の30%、女性の20%が脂肪肝と診断されています。
近年、我が国を含め世界的に増えている疾患です。
食べ過ぎや運動不足などで摂取カロリーが消費カロリーを上回ると肝臓に中性脂肪が溜まります。肝細胞のうち病理学的に5%以上に脂肪が蓄積した状態を「脂肪肝」と言います。(エコーやCTでは20%以上に脂肪滴で診断される)
脂肪肝はさらにアルコールの多飲による「アルコール性脂肪肝」とアルコールを飲まない、または少量しか飲まない「非アルコール性脂肪肝(NAFLD:Non alcoholic fatty Liver Disease)」に分かれます。
NAFLDの中でも組織学的に「非アルコール性脂肪肝(NAFL:Non alcoholic fatty Liver)」、「非アルコール性脂肪肝(NASH: Non alcoholic fatty Steatohepatitis」に分類されます。NASHはNAFLの進行した状態で肝細胞傷害(肝細胞の風船様変性)や炎症を伴うものと定義されます。
薬剤性
飲み薬や点滴、注射などだけではなくサプリメントや健康食品でも肝障害を起こす可能性があります。過去3-6ヶ月以内に始めた薬があれば可能性がありますので可能であれば中止、薬剤の変更が可能であれば変更しましょう。
抗真菌薬、抗血小板薬、抗てんかん薬、抗がん剤などは注意が必要です。
対策や治療は?
元の病気に対する治療を行います。
食事運動療法、抗ウィルス治療や画像検査などで癌の検索なども必要となる場合があります。一人一人、原因も進行状況も違いますので適切な治療を提案いたします。